駒寅日記

駒場に住む🐯年生まれが日々思うことを書き連ねます。

ライドシェアは誰のため?

2024年4月8日、

東京都内で「日本版ライドシェア」のサービスがスタートしました。

 

NHK記事より引用

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240408/k10014415351000.html

 

「日本版ライドシェア」はタクシー会社が研修や運行管理などを行う運営主体となり、一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶ仕組みです。

 

「日本版ライドシェア」のサービスについて国土交通省「タクシーの運行を補完するもの」として位置づけています。

そのため、タクシーが不足する地域や曜日、時間帯にサービスは限定されています。

時間帯も東京は月~金で7時台~10時台、金土が16時台~19時台、土0時台~4時台など。

 

要は、タクシー運転手の参入障壁を下げることで、

移動ニーズが高まる雨の日や時間帯において、

運転手不足で失注していたタクシーニーズに対応するというものです。

 

需要と供給の最適化を意識できるようになった昨今

そもそも、需要と供給の最適化議論ができるようになった背景として、

GOやS.RIDEのようなタクシーアプリの台頭によって

稼働状況や顧客の需要状況・環境がデータで見える化できることが大きいと思います。

 

推測するにこれまでのタクシー会社は、

ドライバーの売上や電話での配車依頼に対する配車率から、

なんとなく需要を推定するしか方法がなく、

ぼんやりとした「不景気だから、タクシー帰りの人が減った・・」などの

超大雑把な経験則・勘で判断するしかなかったのだろうと思われます。

 

昔は、運転手のおじさんが、どこからどこまで有料配送したか、鉛筆でメモってたよなぁ。文字が汚すぎて読めねえって思いながら見てた。

 

 

タクシーアプリの台頭によって、

ユーザー側の配車ハードルも劇的に下がり、

タクシー業界全体でデータを取得できるようになったことで、

見えなかった潜在的ニーズも含めた需要量を把握することができるように。

それが、レガシーな業界での「日本版ライドシェア」に繋がった大きなきっかけなんだろうと想像されます。

 

 「日本版ライドシェア」、誰のための政策?

「日本版ライドシェア」のニュースを見ていると、

 

アプリによって、ピーク需要が見える化したことで、

 

タクシー業界

「これ、タクシードライバーを突っ込めば、売上はもっと期待できる。

 けど、正規雇用するにはコストがかかりすぎる。オフピーク時を含めて採算が取れるわけではない。」

   ↓

「だったら、ピーク時限定で契約社員を楽に雇えるようにして補完しよ!」

 

 

という流れのようです。

 

確かに、

・タクシーを捕まえられなかったユーザー

・ピーク時に見す見す売り逃していたいたタクシー会社の経営者

・短時間でも売上を上げられる一般ドライバー

は、メリットを得られるような気もする。

 

けど、これって本当・・・?

 

この政策が定着するためには、市場が拡大していく(=ピーク時/エリアが拡大する)ことが前提となります。

が、実は、タクシーの稼働率(営業時間に占める有料走行時間の割合)って右肩下がりの傾向。

タクシーの稼働率1989年に90%越えだったのに対し、2017年には76.8%まで低下。

 

タクシーの稼働率とは?実態や計算方法、向上させるコツ - クロスワーク・マガジン

 

全体的に昔ほど儲からない業界になっているんですね・・。

稼働率が20%下がると一人当たりの月の売上が20万円以上マイナスって、結構なインパクト。

 

これからさらに、日本全体で人口減少が進み、タクシーへの需要の低減が見込まれる中で、「日本版ライドシェア」による恩恵はめちゃめちゃ縮小しそう。

 

もちろん東京と地方は分けて、丁寧に需給分析すべきですが、

 

そもそも目指すべきは、稼働率最大化=生産性の向上なのでは?

そもそも、ピーク時の取りこぼしをなくす/移動手段を確保することがゴールなんだっけ。。

国民やユーザー目線からすると、大事なポイントではあるのだけど、

長期的に見て維持できないのであれば、意味がないと思うのです。

 

業界としては、1台あたり/1ドライバーあたりの時間単価を高めることが重要であり、

そのためにも、稼働率の向上、希少性が高い時間帯の高価格帯での提供が有用なんじゃなかろうか。

 

国交省も、タクシー会社も、

「日本版ライドシェアで人材確保だー」とか言ってないで、

ドライバー職の人たちがもっと効率よく稼げるようにするために、

タクシー/モビリティ需要のオープンデータ化をして、

知恵を捻ることができる体制・プラットフォームを作っていく方が、

中長期的に価値ある仕組みづくりにつながる気がする。

と思ったりなどしましたー。

 

政策は始まったばかり。今後が楽しみ。

とはいえ、

考慮すべき課題や確保すべき目先の利益などは、

タクシー会社の経営者や国交省の人たちだからこその

視点があり、いろんな正解があるのだと思う。

 

日本版ライドシェアをリリースするにも、

涙ぐましい、ドロドロな利権調整があったに違いない。

本当にお疲れ様です….!

 

1年後に、政策によってどんなインパクトにつながったのかの調査資料が

発表されるのが、とっても楽しみ!